「38年前の銀行業界」を振り返る ④ — 総資金利鞘は3分の1以下に…

やらねばならない分析作業、作成せねばならない新資料は山のようにある。そんなわけで、1983年3月期決算を振り返るのは今日で最後。

最終日は「利回り指標」の比較だ。1983年3月期は、貸出金利回り 7.96%、有価証券利回り 7.57%、預金債券等利回り 6.68%、預金債券等経費率 1.61%、預金債券等コスト 8.30%、預貸金利鞘 0.34%、そして、総資金利鞘 0.21%だ。

データを入力していて気が付いたのだが、当時の「全国銀行財務諸表分析」の利回り統計は「全店ベース」であったようだ。

これに対して、2020年3月期は「国内業務部門ベース」で、順に、0.95%、0.91%、0.01%、0.74%、0.75%、0.20%、0.06%である(共に全国銀行の計数)。

全店ベースと国内業務部門ベースなので単純比較は出来ないが、総資金利鞘は0.21%対0.06%なので、経費控除後のスプレッド(マージンではない)が3分の1以下に縮小したことになる。

こんなデータを見ていると「マイナス金利政策下で。銀行に預貸業務でまともな収益を上げろと言っても、そりゃあ無理筋だよな…」と、私はつくづく感じる。

マイナス金利政策転換後、可及的速やかに「業務規制の緩和」や「再編(経営統合)促進策」をパッケージ的に打ち出すべきであったのに、4年以上も無策の放置状態。

そして、菅政権が誕生してから、慌てたかのように規制緩和を早めようとし、経営統合補助金政策を打ち出す「金融当局」と「中央銀行」。

銀行アナリスト稼業を32年続けているが、我が国の銀行業界が不良債権問題を何とか克服しようと悪戦苦闘していた頃、官僚やセントラルバンカーの多くに「強引さ(良く言えば豪腕さ)」は感じられたものの、常にある種の「矜持」が漂っていて、私は尊敬もしていたし、彼らが好きだった。

今はもう…

1983年3月期版の「全国銀行財務諸表分析」を書棚に戻そうとして、何気なく裏表紙を見たら、八ヶ岳オフィスがある「長野県諏訪エリア」の代表企業EPSONの広告だった。「情報がいのちなんだ。」—38年前にそんなお洒落な広告を打っていたんだな。そう、どんな時代にあっても「情報は命」なのである!

—1000号まで残り20本