誰で増えたのか? 何が増えたのか?(①総貸出編:2020年4月統計)— 4月の法人向け貸出増加率は、既にリーマン・ショック後のピーク増加率を上回った!

昨日、2020年5月の預貸金統計速報の資料を配信した。だが、所詮は「速報値」であり、業態別の預貸金増減率以外に得られる情報はほとんどない。正に「Flash」であり、アナリストとしては、チラッと見て、サラッと使う程度の内容なのだ。

これに対して、データ公表タイミングの速報性では劣るものの、日銀の「預金・現金・貸出金」統計や「民間金融機関の資産・負債」統計を使えば、より多彩で、より深い資料の作成と分析が可能になる。とは言いながら、昨日配信した5月速報統計で「貸出金・預金共にその増加率が別世界に足を踏み込んだ」事は十分に確認できた。当面、預貸金、特に「貸出金」の動向から目を離せそうもない。

そこで異例ではあるが、弊社の講演「重見天日コース」のマクロ編で使用している資料の内、数種類を、少なくとも今後数カ月(私が飽きない限りは)、月次ベースで配信しようと決めた。

各回共に資料は3枚(『銀行業界鳥瞰図』ではマックス3枚ルールを作った)。グラフの構成はすべて共通とし、1枚目左が項目別預貸金の「残高推移」、右が「残高構成比推移」。2枚目の左が「前年同月比増減額」、右が「前年同月比増減率」の推移を示す。1枚目と2枚目の対象期間は「過去12ヵ月」である。

そして、最も重要なのが3枚目だ。リーマン・ショック前後の変化を確認できるようにするため、1枚目、2枚目で用いた項目の過去15年間の前年同月比増減率を描いている。さらに、リーマンショック前後の期間と足元の変化についてはオレンジ色の Rounded rectangleで強調した。

同じ構成の資料を「誰で増えたのか? 何が増えたのか?」と題して、預貸金項目別に6~7枚配信する予定なので、初回となる今回の配信で、しっかりと資料構成を覚えて欲しい。

早速、総貸出の相手先別動向資料を配信する。↓ 

PDF File: BEV-2020-0609

結論から言えば、4月の時点で大きく残高を伸ばしたのは「法人(含む金融)」のみだ。法人向けは、既に1月から前年同月比の増加額が拡大傾向にあったのだが、4月は一気に16.1兆円の増加となり、グラフの形状をすっかり変えてしまった。

4月の法人向け増加率は5.0%は、リーマン・ショック後の増加率ピークとなった2009年1月の4.1%を既に上回っている。そして5月がどうなるかは、昨日配信の資料から大凡の予想はつくだろう…

なお、3枚目の資料では、これから先も「地方公共団体(或いは公金)」の変化率の派手さが目立つはずだ。だが、1枚目の資料の残高や構成比を確認いただければ、地公体貸出や公金預金の存在感は、法人や個人と比して著しく低い事が確認できるだろう。

結局、大きな経営環境変化(有事)が発生した際に、預貸金統計で重要なのは「法人と個人がどのような行動を起こしたか(起こすか)」を分析(予測)する事なのだ。

まあでも、そんな面倒な事をしなくても、今回の資料だけで、COVID-19禍が銀行の貸出変化に及ぼす影響は、リーマン・ショックなど比較にならない程に大きい事が確認(予想)できるだろう。