国内貸出業務の収益性分析(2020年3月版)— 「幸せな時代」の回顧と「歪んだ政策」の結末、そして迫る「ダムの決壊」

20年3月末のマクロ統計関連資料のアップデートを早くすべて終えてしまいたいのだが、統計発表のタイミングは区々なので、なかなか簡単ではない。

今日は講演でもお馴染みの「国内貸出業務収益性分析」資料を配信する。講演では「貸出業務の数量効果・価格効果分析料」として説明している。↓

PDF File: BEV-2020-0605

最近は、グラフに表示する期間を2006年3月以降に拡張した。我が国銀行業界にも「価格効果(ストックベース貸出約定金利の前年同月比変化率)」も「数量効果(国内貸出平残の前年同月比増減率)」共にプラスであり、結果として「合算効果(価格効果+数量効果)」が2桁の増加を達成した「幸せな時代」があった事を確認(思い出す)ためである。

だが、その「幸せな時代」は、ほぼリーマン・ショックを境に終焉する。リーマン・ショックに伴う数量(貸出)効果の増加は確かに存在したが、その増加率はピークでも4%強に留まり長続きはしなかった。

一方、リーマン・ショック前から低下傾向にあった価格(貸出金利)効果は、リーマン・ショックによる景気悪化に対する(+借り手保護的)金融緩和策により、劇的に悪化。国内銀行は2008年12月、地域銀行は1ヵ月遅れの2009年1月に「合算効果がマイナス」に転じ、以来、一度もプラスに転じる事なく「With COVID-19時代」を迎えてしまったのだ。

5月下旬に東京で行った講演の際に、この資料を見た(おそらく初めての)出席者の方から、「2016年から後のV字型の価格効果と合算効果の谷は、マイナス金利政策の影響という理解で正しいのでしょうか?」という質問が寄せられた(このタイプの質問は久し振りだった)。

私が「その通りです。」と答えると「マイナス金利政策導入による数量効果は、ほとんどなかったんですね?」との質問が続いた。「皆無というわけではありません。国内銀行ベースでは、短期間ですが数量効果が高まりました。大手銀行の貸出増加の貢献ですね。」と答えた。

すると次に「じゃあ、マイナス金利政策は『地銀苛め(いじめ)の政策』となったわけですか?」とさらに問われた(30歳代前半位の質問者だったが、なかなかお洒落な質問である)。

私は、数ページ先にある『業態別の与信費用比率(与信費用÷総与信)長期推移図』を示しながら、「我が国バブル経済のピーク時よりも与信費用水準が低いという異常な時代を演出し、結果として地域銀行も与信費用を気にせずに済む時代を享受できました。」と答えた。

そして「でも、これが我が国経済に本来起こるべき、産業や企業の自然かつ正常な新陳代謝を阻害してしまったように思います。その反動が、COVID-19パンデミックを切っ掛けに、これから一気に押し寄せるのだと思いますよ。ダムの水は、COVID-19の前に、おそらく既に満杯だったんです。」と続けた。

予想はしていたが、次の質問はもうなかった…