「絶望の林業(田中淳夫氏著)」に感動・触発されて — 林業と地域銀行の相似性

昨年10月の新『銀行業界鳥瞰図』配信再開から昨日までに70本を配信した(除く、新年ご挨拶)。もう旧『銀行業界鳥瞰図』配信の頃の感覚を取り戻したので、いきなりの「長期無期休稿」なんて事態に陥ることは、おそらくはないだろう。

これまでの70本は、すべて銀行業界に関連したマクロデータの資料をしっかりと添付した「真面目な内容」である。八ヶ岳ライフを中心とした「プライベート&趣味系」のコンテンツは、『八ヶ岳稿房(https://triglav-research.com/)』で配信しているので、まあ当たり前ではある。

だが、さすがに現在の真面目路線にちょっと飽きてきた。旧『銀行業界鳥瞰図』には「四方山話」という人気カテゴリーがあり、データなんてまったく扱っていなくても、ビュー数はどれも高水準だったのだ。

そんなわけで、そろそろ新『銀行業界鳥瞰図』でも四方山話を復活させることにした。まあ、ちょうど良いネタがあったからなのだが…

実は、丸1週間のお仕事専念山籠もり期間に入ってから、毎晩、銀行とは無関係の本を読んでいた。タイトルは『絶望の林業』、著者は森林ジャーナリストの「田中淳夫」氏だ。

新聞だったか経済誌であったかよく覚えていないのだが「とても読み応えのある良著」みたいな「べた褒めの書評」が掲載されており、それをふと思いだして年末にAmazonで購入したのだ。

田中淳夫氏著の「絶望の林業」。データが豊富に掲載されているのが私の好みだ。ここ数年読んだ専門書の中では最も印象的で内容もNo.1。出版社は「新泉社」。あれ、どこかで見た出版社だなと思ったら、シリーズ「遺跡を学ぶ」と同じ会社だった。この1~2年で最も多く書籍を購入した出版社である。

講演で定期的に訪問している銀行ではご存じの方も多いと思うが、私は「森林インストラクター」なる資格を有している。この資格、1次試験は、森林、林業、野外活動、安全・教育の4科目の筆記試験で、これに合格すると2次試験で実技と面接がある。証券アナリスト試験なんて(私的には)比較にならない程の「難関試験」だ。

私が合格した2000年代の初めの頃は、受験者の多くは営林署の職員の方や農林業系の学校の先生等で、面接試験の際に「合格したら金融機関で勤務している方では第1号じゃないかしら..」と試験委員の方が語っていたのを覚えている。

そもそも、こんな仕事と無関係の試験を受験しようと思ったのは「八ヶ岳ライフ」で森林に興味を覚えた事と、ちょうど中央銀行に勤務していた時期で、時間に余裕があったからだ。

そんなわけだから、さすがに銀行には及ばないが「林業」についてはかなりの知識を有している。今だと、銀行≑文房具・デジガジェ>土偶さん>DIY≑森林>野鳥さん って感じだろうか。

約300ページの本なのだが、林業の実態を具体的なデータを随所に盛り込みながら(私にとってはこれが極めて重要だ)、第1部(絶望)と2部(失望)で、正に「絶望的状況」を淡々と客観的に描いている。

そして、最後の第3部(希望)で、極めて困難な状況の中からどんな将来を目指すべきかについて「(限られた)救い」を示すのだ。

今日は、この本の内容を紹介するつもりなど毛頭ない。第2部の前半辺りまで読み進めた時点で「まるで地域銀行の本を読んでいるかのような感覚」を覚えた事を伝えるのが主旨である。

7日の夜から読み始めて9日には一通り読み終えた。どうして「地域銀行」とオーバーラップするのかを確認したくて、昨晩、第1部と第2部の印象的だった部分を読み返した。

その結果、「林業」と「地域銀行業界」の共通点(相似性)のようなものが浮かび上がったのである。

要約すると
①社会構造・経済構造変化の影響を極めてネガティブに受ける(共に、生産年齢人口の減少は特に深刻な問題)。
②為政者や行政当局の失政・歪んだ政策の影響を被っている(林業であれば何でも補助金政策・銀行で言えばマイナス金利政策などが典型的な例)。
③厳しい状況にあるにも係わらず当事者の危機感が希薄で対応のスピードが遅い(或いは、既に思考停止状態)。
④業界に関する情報が正確に外部に伝わっていない。マスコミを中心にバイアスのかかった情報が蔓延している。
⑤現状も将来も厳しいのは事実であるが、我が国の将来にとって絶対に必要で、輝きを取り戻す必要がある重要な産業である。
の5項目であった。

個人的な感想であるが「絶望の林業」の最大の意義は、④のバイアスのかかった情報を具体的データでしっかりと正し、将来の林業の在り方を模索するための「真実の姿」を浮かび上がらせたことにあるように思う。ここ数年読んだ本(専門書)の中で、最も強烈な印象を与えてくれた本となった。

「絶望」→「失望」→「希望」という流れもお洒落だった。私は、ここ数年、嫌になる程に地域銀行に「失望」してきたが、決して「絶望」はしていない。ただ残念ながら明確な「希望」を描けるには至っていない。

今年1年掛けて、しっかりとした「希望」シナリオを構築し、愚直に「地域銀行に係るデータに基づかない情緒的見解」に対して反証していこうと決めた。

善は急げで、既に今日から新たな取り組みを開始。今後、「四方山話」でお伝えしていこうと思う。

まずは「地方創生と地域銀行」に関連した本を読み直そうと書棚をチェックしたら、すぐに15冊位見つかった(写真はその内の一部分)。すべて目を通しているはずだが、印象が薄くて、内容がまったく頭に残っていない。困ったものだ…